#小説 「 #天皇制最期の日 」 (57 神宮の使者R(三走目) 小さな小さなフェリーターミナルから離れると、見えるものは限られる。 道の右側に、隙間なく立ち並ぶ風力発電装置。その支柱は、道に近い側から、20m、60m、100m、140m……だったはず。 どれも、速さに差はあれど、三枚翼を回され続ける。 道の左側には、ジェット燃料生産用の藻プール。ナゴヤドームの比ではない広さ。人工芝の比ではない緑、眩しい。 先の大津波の爪痕を伝える公園。誰もいない。 電動バイクとともに、道を進む。 道の左側は……太陽光パネルの平原、大型蓄電池、温室ハウス密集地帯、太陽光パネルの平原、大型蓄電池、温室ハウス密集地帯、太陽光パネルの平原、大型蓄電池、温室ハウス密集地帯、十階建ての復興マンション、太陽光パネルの平原、、、数こそ正義と言わんがばかりの繰り返し。 見当たらないものは……電線、交通信号、一軒家、歩行者、人気、活気。 走る、に専念するなら、この道は心地よい道。直線的な線形も、乏しい交通量も、右側から吹き続ける風も。 しかし、広く明るく平板な空が、常に威圧し続ける。 走行するバイクを、前を走る車を、この半島すらもを。 (つづく) 渥美半島　https://amzn.to/3mjmEUj