舶匝(はくそう online_checker) on GETTR : #小説 「 #天皇制最期の日 」
(47 「鬼将軍」と「坊主ヘッド」)
コードネームQが意識を失ってから約三時間後、丸の内の或るビルの三十階、窓際の個室。窓に目をやれば、皇居が嫌でも目に入る。「鬼将軍」はクライア...
#小説 「 #天皇制最期の日 」
(47 「鬼将軍」と「坊主ヘッド」)
コードネームQが意識を失ってから約三時間後、丸の内の或るビルの三十階、窓際の個室。窓に目をやれば、皇居が嫌でも目に入る。「鬼将軍」はクライアントに、電話を掛けた。
「あのデータは機器ごと、回収済みです。……解析は提携先が始めています。……引き渡し方法は……その方が良いでしょう。
では、後程。」
「鬼将軍」は、電話を切り、電話を待つ。
電話が来た。出た。
相手は、あの新妻の父君。
新妻の父君によると、
手術は成功、容体は安定。生命の危機は去ったものの、後遺症の有無はまだ、不明。
担当の脳外科医が
『もし救急ヘリによる搬送がなければ、厳しかった』
と、父娘に伝えたという。
「鬼将軍」は、
「お役に立てたなのならば、何よりです。」
と丁重に返し、続ける。
「こちらは、救急ヘリ部門に指示を出しただけ。着陸場所まで、そちらの車で動かして下さったお蔭です。……今回の費用は全て、こちらで持ちます。……いえ、お気持ちだけで。お気持ちだけで。……ならば、機器の買取金額に織り込み済み、ということで。
夫人のお加減は?……ならば、お腹の赤ちゃんは……安心しました。
では、後程。」
「鬼将軍」は電話を切り、溜息一つ。
「あの調子ならば、口封じ部門への指示は、不要……か。」
「鬼将軍」が皇居を睨む。
「引き渡し済むまで、生きてろ。天皇っ。」
その約三時間前。
午前十時五十九分五十秒の丸の内、「鬼将軍」と同じビルの三十八階、細長いエレベーターホール。左右両側に戸がいくつも並んでいる。
その真ん中でスキンヘッドの青年(以下「坊主ヘッド」と記す)が、来客を待っていた。
仏具の輪(りん)のような音が鳴った。
(続く)