舶匝(はくそう online_checker) on GETTR : #小説 「 #天皇制最期の日 」
(46 新郎Qの場合(二本目)。)
「鬼将軍」に逆らう。
「そのリサイクル屋が、親子共々、いません。」
「こんな日に?」
「どんな日でも、出陣です。それが、...
#小説 「 #天皇制最期の日 」
(46 新郎Qの場合(二本目)。)
「鬼将軍」に逆らう。
「そのリサイクル屋が、親子共々、いません。」
「こんな日に?」
「どんな日でも、出陣です。それが、あの親子です。
だから、プロポーズが四回も――」
「あー、その話は五回も聞いた。」
と、ブロックされ、
「できるか。」
と返される。
「探ってはみます。
期待はしないでください。」
遠くから三味線の音。この間抜けな調子は……。
「帰ってきました。探り、入れます。」
「鬼将軍」がサラッと言った。
「出産おめでと。」
「半年後の祝辞、感謝します。」
電話を切って、起き上がる。
端末、手にしたまま。
床がゆらゆら。脚がなかなか前に動かない。
トラックが止まったから、三味線が途絶える。
階段もゆらゆら。
しかも、時々、頭痛と吐き気。
やっとガレージ、というか、倉庫に降りると、親子がせっせと荷下ろし。荷下ろし。荷下ろし。
二人に声を掛ける。
「お帰り、なさい。」
頭痛がまた来た。
義父は荷運ぶ手を止め、ニヤリ。
「少佐、昨日は大変だったな。」
「あのビール、開けなくて正解でした。」
と言いつつ、義父の手にある荷物に、焦点が合った。
「ちょっと、待ってください。待ってください。」
と大声上げて、しかし、頭痛が来た。
「どうした?」と首をかしげる義父。
流石、元・女形。角度が完璧……ではなくて、
「その機械は、どこから?」
妻が答えた。
その答えは……あのラボだ。
「その機械、うちの会社が欲してます。」
親子の手が止まった。
端末で、「鬼将軍」に電話を掛ける。
なぜか、妻が荷物を放り出して、駆け寄る。
「鬼将軍」が出た。
だから、伝えた。
「ビンゴ、で、す。」
しかし、端末が手から離れた。
妻の頬が、手が……
しかし、視界が、消え、た。
(つづく)