舶匝(はくそう online_checker) on GETTR : #小説 「 #天皇制最期の日 」
(45 新郎Qの場合(一本目))
頭痛で目が覚めた。
目の前に端末が転がっていた。その横に我が手があった。端末を手に取る。時刻を確認する。午前十時五十九分十秒。
「...
#小説 「 #天皇制最期の日 」
(45 新郎Qの場合(一本目))
頭痛で目が覚めた。
目の前に端末が転がっていた。その横に我が手があった。端末を手に取る。時刻を確認する。午前十時五十九分十秒。
「鬼軍曹」に無理言って、有休を取って、正解だった。
軽い吐き気。
こんな状態では、照準合わせられない。有休を取って、正解だった。
眼球だけを動かして周囲を確認する。妻の姿も、義父の姿も、なし。
しかし、宴の跡、あり。
思い出す昨夜の宴席。懐妊祝いは……酒の応酬だった。
不発弾の信管を抜いたときのように、ゆっくりと、ゆっくりと、上半身を起こす。
未開封のビールが視界の端に見えた。まるで、不発弾。
掛け時計は、午前十一時二分ちょうど。
「AI様、AI様、ニュースを」
AI様は答えた。
・交通機関運休相次ぐ
・天皇、意識不明。
・あの議員、爆殺。
まあ、そういう日もある。
・品川でPMC同士が銃撃戦。
頭痛も吐き気も、吹き飛んだ。
「まさか……」と、端末の履歴を、確認する。
本社からの呼び出し、数十件。
本社に電話を掛ける。
「鬼将軍」が電話に出た。
「遅かったな。どうした。二日酔いか。」
「正確に表現すると、頭痛と吐き気です。」
「几帳面さ、次の世代に継承されることを願う。
……安心しろ。銃撃戦は収束した。」
しかし、「鬼将軍」は、意外なことを命じた。
「あのラボから流出した電子機器・記録装置を回収しろ。」
未知の領域。
「リサイクル屋の夫なら、できるだろ。」
リサイクル屋の当人では、ない……のだが。
(つづく)
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