舶匝(はくそう online_checker) on GETTR : #小説 「 #天皇制最期の日 」
(35 准教授Oの場合(一つ目)。)
午前十時四十四分、札幌駅至近、お高いホテルのシングルルーム。
新幹線、飛行機、ともに動かない。
動く見通し、ない。
飛...
#小説 「 #天皇制最期の日 」
(35 准教授Oの場合(一つ目)。)
午前十時四十四分、札幌駅至近、お高いホテルのシングルルーム。
新幹線、飛行機、ともに動かない。
動く見通し、ない。
飛行機が動いたとしても、飛行機はマズい。
参ったなぁ。
実に参ったなぁ。
延泊はできたけど……参ったなぁ。
連絡のしようがないからなぁ。どうしたものか。
匿名化処理済み端末(黒い焚く松)に電話が掛かった。
「もしもし」
変声機を通した声が返ってきた。
「取引は中止。物は元の場所に戻せ。報酬は元の場所にある。」
電話は、切れた。
電話がまた、黒い端末に掛かった。
「もしもし」
変声機を通した声が返ってきた。
「取引は続行。」
電話は、切れた。
どうしろ、と?
電話がまたまた、掛かった。但し今回は、いつもの私用端末(白い端末)。
「もしもし」
あの声が返ってきた。
「今日中に、金払え。さもないと、ばらす。」
電話は、切れた。
参ったなぁ。どうしたものか。どうしたものか。
「とりあえず、ビール。」
冷蔵庫から、ビール三本(うち一本はロング缶)。
窓際のテーブルに置く。
いや、午前中からビールは、良くない。
昨夜、アフロから貰ったハッカ飴を口に投げ込む。
ビールは正午まで待とう。
しかし、それではぬるくなる。いや、冷蔵庫に戻すは、もったいない。
開けようか、空けようか、開けまいか。
小さくなったハッカ飴を奥歯で砕いた瞬間。
ひらめいた。
(つづく)