舶匝(はくそう online_checker) on GETTR : #小説 「 #天皇制最期の日 」
(29 取締役Lの場合(後)、少しだけK)
Lはドクターに尋ねた。
「手慣れている方がどうして、こんな軽傷の患者を扱っているですか。向こうの方、修羅場でしたよ。」
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#小説 「 #天皇制最期の日 」
(29 取締役Lの場合(後)、少しだけK)
Lはドクターに尋ねた。
「手慣れている方がどうして、こんな軽傷の患者を扱っているですか。向こうの方、修羅場でしたよ。」
ドクターの顔が曇った。
「天皇の味方は、扱いたくないからです。……分かって頂けますよね。」
取締役はゼロ秒で、納得した。
「悪い噂は聞きますね。」
「それら、ほぼ事実ですので。」
取締役は驚くまで五秒を要した。
「なぜ?
断言を?」
ドクターは寂しそうな顔をした。
「理三時代の同期が、関わっているので……引き留めることが出来なかったので。」
Lは、一般病棟に移された。
とは言っても、自動運転の患者用カート「高山彦九郎」号(正面と後面に明記)で病室(個室)まで移動。
「高山彦九郎」号は人とすれ違うたびに
「ごめん、ごめん」
と連呼。
Lは、ぼやいた。
「新手の嫌がらせか?」
「高山彦九郎」号が
「とお、ちゃくー」
と間抜けな声を上げて、停まった。
真横の戸がひとりでに開いた。
都の向こう側は病室(個室)。
Lが、恥辱の「高山彦九郎」号から下り、病室に進むと、戸が閉まった。
閉まるなり、端末で電話をかけた。
「もしもし、CEOですか……鉄砲で撃たれて、今、病院です。……明日には退院できます……手だけです……四回目ともなれば、慣れたものです……担当医、北九州で銃弾、取り損ねたあいつでした。二回目のときの。」
Kに問われたので、Lは担当医の氏名と病院名を伝える。
Kは、ある提案をした。
Lは、頭を下げた。
「わざわざ、ありがとうございます……ぜひとも、あいつを東京湾に沈めてやってください。
ではっ!」
(つづく)