舶匝(はくそう online_checker) on GETTR : #小説 「 #天皇制最期の日 」
(18 H の場合(後)。)
「天皇と名の付くものは、今後価値が下がる、というのが、もっぱらの評判です。ですので――」
電卓で買取額を示した。
我が店の「手持ち現金...
#小説 「 #天皇制最期の日 」
(18 H の場合(後)。)
「天皇と名の付くものは、今後価値が下がる、というのが、もっぱらの評判です。ですので――」
電卓で買取額を示した。
我が店の「手持ち現金」全額。マンション一部屋なら、買える。
その金額に、売り手は落胆顔。
畳み掛ける。
「今日、他のお店殆ど、開いてないでしょ。このあたり焼き討ち遭うかも、って心配して、どこも開けたがらないから。」
売り手の顔は更に暗くなる。
「今日逃せば、二度と売れないよ。」
売り手は、首を垂れた。
カウンター下の窪みに手を突っ込み、我が店の「手持ち現金」を引っ張り出す。
赤福の紙袋。札束がぎっしり詰まっている。
チラリと見せた紙袋の中身。売り手の顔を僅かながらも、緩ませた。
売り手は札束を一枚一枚数えることすらせず。
赤福の紙袋をスーツケースに。
その大半は模造紙幣だ。強盗対策用の。
「買取証明書、ない方が、都合良いだろ。」
売り手の首は、縦に小さく動いた。
哀れで愚かな売り手に、
「お譲り頂きありがとうございますっ!」
と一礼。
哀れで愚かでも、客は客だ。
売り手は無言のまま、店から去った。
さて、高跳びの準備だ。
端末を手に取り、リニアのきっぷを買いましょ……運休?
品川駅で銃撃戦?
東海道新幹線も、運休。
こんな厄介な物を捌ける奴は、大阪にしかいないのに。
AIどんに、質問した。
「大阪に行きたい。今日行きたい。」
AIどんは、いつもの野太い声で、厄介なルートを宣告。
大宮・新潟・福井・京都経由。大阪着は夕方。
しかも、大宮まで電車、全部運休。渋滞都内各所で発生。
さて、どうしたものか。
あの手しかないよな。
あの手は避けたい、年齢的に。
……ちりん、ちりんっ。
店の外から聞こえた。
深呼吸一回、二回……
自転車と足腰、使いましょう。