舶匝(はくそう online_checker) on GETTR : #小説 「 #天皇制最期の日 」
(10 F議員の場合(1st) )
七時二十二分、お高いホテルの広い部屋で、朝食会。
天井が高いなぁ。
参加者は十数名。人口密度が低いなぁ。
来たり去ったりする運搬用...
#小説 「 #天皇制最期の日 」
(10 F議員の場合(1st) )
七時二十二分、お高いホテルの広い部屋で、朝食会。
天井が高いなぁ。
参加者は十数名。人口密度が低いなぁ。
来たり去ったりする運搬用ロボットと我々参加者の席との間を、ウェイターが一人、行ったり来たり。
機械の奴隷、だな。
その奴隷、もとい、ウェイターが、いつもの粥御前を丁重に置く。
参加者によって、朝食の内容はまちまち。
「シリアルに豆乳」(おいしいのか?)、パンケーキ、American Breakfast も、Continental Breakfast も、懐石料理じみたものさえある(料理人たちに同情する)。
幸いにも、今回「は」納豆が存在しない。
それむにしても、あいつはまだ、来ない。
また遅刻か?
「重篤らしいですな。」
と、右隣の「シリアルに豆乳」が、珍しく小声で話しかけてきた。拡声器じみた普段の威勢は、豆腐屋に搾り取られたのか。
まるで、おからだ。
おから合わせて、小声で返した。
「そのようですな。」
「心配で心配で」
「そうですな。」
天皇の体調に興味など、ない。けれども、とりあえず相槌は打っておく。長年の議員生活で身に付けた「のらりくらり技術」だ。
運搬用ロボットと人がぶつかる音がした。
当然、人が尻もちをついた。
あの寝坊か?
いや、それにしては、顔立ちが整い過ぎている。
元・尻もちは、真向いにいるAmerican Breakfast に駆け寄り、耳打ち。あいつの秘書か。まぁ、いい。
左隣のパンケーキが
「この後、どうなりますか。」
と話しかけてきた。
いつも以上にパッサパサな声は少し、嬉しそう。
粥御前の粥を一口食べ、それから、匙を投げた。
「なるようにしかならんでしょう。
そして……あのことはいずれ、バレるでしょう。」
(つづく)