#小説 「 #天皇制最期の日 」 (9、 E氏の場合(下)。) 「千日回峰行を達成した――」 あー、あの方ね。 「――京都御所に土足参内。十二年ぶり。」 どうして、あの下種に加持祈祷なんてするの? 「市況は、やや円安。」 外貨預金に移して正解でした。正解しても、大した意味ないのだけど。 壁にたった一枚、貼ってある写真と目が合ってしまった。 写真の中は、眩しい袴姿。卒業式のとき。 「出かけて」から……もう、二年。 生きていてね。 AI殿が声を上げた。 「お電話です。京都府警刑事部からのお電話です」 「出ます」 即答した。迷う理由なんてないから。 相手は二年来、やり取り続いてる、いつもの刑事さん。 でも、電話の向こう側は、いつもとは違う。あまりに騒々しい。怒号さえ。 刑事さんは口早に 「用件だけ手短にお伝えします。見つかりました。」 「本当ですか」まるで風船になったような気分。 しかし、 「ただし、意識不明。」 風船を割られた気分。 「意識不明って……どういう――」 「地域部の覆面パトカーをそちらに、差し向けています」 「パトカー?どういう――」 「仔細は後程、説明します。」 言葉尽くされる方だから、信じることはできるけど……。 刑事さんは、更に。 「あと、和装では目立って、狙撃される恐れがあります。」 「狙撃?」 一体とどういうこと?狙撃? 「そうです、狙撃です。なので、洋装。しかも、出来る限り、ありふれた服、かつ、雑踏に紛れやすい服で。それでは、後程」 電話が切れてしまった。 和箪笥は、着物ばかり。 洋服なんて、久しく着ていないし、持ってもいない(全部、雑巾に化かしました)のに……娘の洋服は、サイズは合うけども、雑踏で必ず注目集める服ばかり。 さて、さて、さて。 どうしましょう。 どうしましょう。 #皇位継承