舶匝(はくそう online_checker) on GETTR : #小説 「 #天皇制最期の日 」
(8、 E氏の場合(上)。)
朝七時、京都の町屋。我が家。
着付けを終えた頃に、
「おかゆが、焚けました」
と、AI殿のお言葉。
きょうも、いつも通り。...
#小説 「 #天皇制最期の日 」
(8、 E氏の場合(上)。)
朝七時、京都の町屋。我が家。
着付けを終えた頃に、
「おかゆが、焚けました」
と、AI殿のお言葉。
きょうも、いつも通り。
階下に降りる。
二人掛けのダイニングテーブルがぽつんとある。その上に、お一人様用の炊飯器。ゆらゆらと湯気。
その右隣に鍋敷き。左隣にミトン。キッチリ両手に付けてから、炊飯器の蓋を空ける。
湯気の奥に、お米一同。
お米が一つ一つ艶めかしい。五穀もしっかり存在感。
釜を引き出して、定位置に、トンと置く。そして、ミトンを定位置に戻す。
冷蔵庫から、いつものお漬物といつものソイ・プロテイン。
お漬物は、釜の右脇。
ソイ・プロテインは、いつもの量だけ、粥に振りかけて、冷蔵庫に戻す。
テーブルの引き出しから匙一つと匙置き。釜の手前が定位置。
椅子を引いて、着席。
毎朝の祈りをささげて、匙を手に取る。
そして、いつもの、静か過ぎる朝食が始まる。
粥を匙ですくって、口に。
粥を匙ですくって、口に。
漬物を匙ですくって、口に。
粥を匙ですくって、口に。
粥を匙ですくって、口に。
こんな朝食、望んでいない。
それでも、
粥を匙ですくって、口に、
を繰り返すしかない。
そして、今日も食べ終える。
お漬物皿、匙、釜を流しに置く。
夕方まで放置しても、咎める人は誰もいない。
溜息の代わりに、AI殿に言葉を掛ける。
「AI殿、今朝の天気とニュースを」
「まず、最高気温は四十度。四十度。冷房を使ってください」
今も掛けていますよ。
改装したときに断熱材、入れましたよ。
「都内では通行止めが……」
「ここは都内ではありません。京都です。次」
「天皇陛下、ご危篤。」
まだ生きていたのね。あの下種。
「次!」
(続く)
#皇位継承 #京都 #町屋